姫路モノレールの廃線跡
訪問日
2006年5月2日(火)

 かつて姫路には市営のモノレールが走っていた。1966年に姫路〜手柄山が開業。しかし、利用者の低迷により8年後の1974年に運転休止。さらに5年後の1979年に廃止された。

 2001年、赤穂線に乗るために姫路駅から電車に乗ったとき(中国・四国レポート参照)に車窓からモノレールの廃線跡のような物を発見したのが、この事を知るきっかけとなった。このときは姫路にモノレールがあったという事実は知らなかったし、地図にもそれらしき記載がなかったので分からなかった。また、今では分からないことはとりあえずインターネットで検索してみるという行動をするのだが、その当時はそれもしなかったので忘れてしまっていた。しかし2006年、中国・四国レポートを見た人からのメールで事実を知った。
 インターネットで検索してみると、現在でもたくさんの遺構が残っているらしい。こんな日常空間に残された遺構はミステリアスで好きなので、関西方面への旅行のついでに姫路モノレールの廃線跡を自分の目で見ることにした。このページで紹介する写真は廃止から27年経った姫路モノレールの姿である。

JR姫路駅側から見た風景  JR姫路駅(北口)側から見た風景。写真中央にモノレールの軌道桁を支えていたコンクリートの橋脚が見える。写真手前のあたりにかつてモノレール姫路駅があったらしい。


橋脚が残る商店街  上の写真で見えていた橋脚がこれ。商店街の建物の間に橋脚だけが残っている。かつてモノレールがここを走っていたことを考えると感慨深い。


軌道付き橋脚  上の写真で奥に見えているが、山陽電鉄を跨ぐ部分の橋脚は太く、軌道桁が一体になっている


軌道桁に残るレール  軌道桁をよく見ると上部にレールが残っている。姫路モノレールは1本の鉄レールで走行する珍しいモノレールなのでコンクリート桁の上に鉄レールが敷かれているのだ。このようなモノレールは「ロッキード式」と呼ばれていて世界でも姫路モノレールと小田急向ヶ丘遊園線(廃線)に採用されただけだ。


軌道桁も残っている商店街  山陽電鉄の線路をを越えると橋脚だけでなく軌道桁も残った状態が続く。


軌道が続く商店街  しばらく軌道が続く。この風景を見てちょっと違和感を感じた。それはモノレールの軌道が商店街の建物の上にあることだ。現在の都市モノレールでは道路上に軌道を設置する場合が多い。ここは普通の鉄道でよくある高架下の商店街というイメージに近いな。


ツタが絡まる軌道  軌道には所々ツタが絡まっている。27年間メンテナンスされてこなかった割には状態が良いかも。


大将軍駅に入る軌道  しばらく進むと唯一の中間駅であった大将軍駅が見えてくる。


大将軍駅  大将軍駅のあるビルは中層部分をモノレールの軌道が貫通した他では見られない構造。下層が商店、中層が駅、上層がアパートという複合ビルで、1960年代のビルとしてはかなり画期的だと思う。
 モノレール廃止後は駅部分がビジネスホテルに改装されたようだ。上の写真で建物右下がホテルの入り口で、かつては駅の入口だったらしい。しかし、現在はそのホテルも閉鎖され遺構という雰囲気がより高まっている。
 上層はUR都市機構の高尾アパートとして現役だ。このアパートの住人達はこの建物をどのように思っているのだろう。
 ところでこのビルはモノレールの軌道に合わせて微妙に円弧を描いている。(曲がって見えるのは錯覚ではない。)部屋の間取りで変な空間とか、微妙に台形の部屋とかあるのだろうか?


大将軍駅ホーム  大将軍駅のホーム。この部分だけ見ていると今にもモノレールが走ってきそうな感じがする。


大将軍駅  手柄山駅側から見た大将軍駅のビル。現在でも付近に大きなビルは無くかなり目立っている


大将軍駅ホーム  手柄山駅側から見た大将軍駅のホーム。こちらは軌道がとぎれてしまっている。


とぎれた軌道  大将軍駅から手柄山駅方面のレールは道路を跨ぐところでとぎれている。老朽化によって落下が起こると危険な部分は軌道を撤去しているようだ。


カーブする軌道  大将軍駅から先では大きくカーブし、手柄山方面へと向かう。ツタが多く絡まり27年の年月を感じさせるドリームランドモノレールの大船駅を連想する風景だ。


山陽新幹線をくぐる  カーブ後、山陽新幹線の高架下をくぐる。山陽新幹線の新大阪〜岡山開業が1972年なので姫路モノレールとほぼ同年代。一方はバリバリの現役で、もう一方は遺構と化している・・・大きなギャップを感じさせる場所だ。


山陽本線を越える  山陽新幹線をくぐるとすぐに山陽本線を越える。この部分が2001年に車窓からモノレールの廃線跡を発見したところだ。現在は山陽本線が高架化され、姫新線の列車だけが地上を走る。


また続く軌道  山陽本線を越えると、また軌道が続く。


くねる軌道  その先は蛇のようにくねらせた軌道が続いている。奥に見える緑の部分が終点の手柄山駅があった所のようだ。



 終点の手柄山へだいたい半分ぐらいの所まで来たが、時間の都合でこの先は行けなかった。だが、廃止から27年たった現在でもかなり多くの遺構が残っていることが分かった。解体に費用がかかるため残っているようなものだが、景観を損ねるとか老朽化で危険だとかで、いずれは解体されて無くなってしまうかも知れない。しかし、廃止されているとはいえ唯一残ったロッキード式モノレールであり、歴史遺産として何らかの形で保存展示するような方向にして貰いたいと思った。

出口

アルフの部屋Copyright (C) 1996-2017 Yoshinori Adachi