特急「あさぎり3号」
車両
JR東海 371系電車
路線
小田急電鉄 小田原線 新宿〜松田
JR東海 御殿場線 松田〜沼津
乗車日時
2011年12月23日(金) 10:20発、12:18着(403〜3M)
乗車券類
乗車券・特急券

 2012年3月17日のダイヤ改正で371系電車が特急「あさぎり」から引退するので乗車したいと思っていた。特急「あさぎり」は小田急電鉄とJR東海を直通運転して新宿と沼津を結んでいる。さらに、同改正で運転区間が新宿〜御殿場に短縮されてしまう。車両はJR東海の371系電車と小田急電鉄の20000形電車(こちらも引退)で運転され、相互乗り入れする。
 前に一度、特急「あさぎり」に乗りたいと思って、前橋駅のみどりの窓口で指定券を購入しようとしたのだが・・・発券できないと言われてしまった。特急「あさぎり」の座席予約は小田急電鉄で管理しているため、JRを走る特急列車なのにJR東海などの一部窓口でしか発券できない。当然、いつも利用している「えきねっと」(JR東日本のインターネット予約サイト)でも無理。小田急電鉄のインターネット予約「ロマンスカー@クラブ」では小田急線内のみの取り扱いになっている。両社をまたがる区間を利用するなら、小田急電鉄かJR東海の駅に出向くしかない。遠方からの旅行では利用しづらい(事前予約ができない)列車だ。
 そんなこともあって、なかなか乗る機会が無かったのだが、来年の春になったら無くなってしまう371系電車の特急「あさぎり」、しかも新宿〜沼津全区間を乗るなら今しか無いと思い立って、12月末に急遽出かけることにした。小田急電鉄のサイトで空席情報を確認することはできるので、乗車日の前日に確認して満席だったら旅行中止、空席ありなら旅行実行と決めた。
 引退が発表されたものの、引退までまだ3ヶ月ほどあるので、お別れ乗車で満席になるほどでは無いようだ。空席があったので小田急新宿駅に向かった。自動券売機で特急券を購入する。普通車とグリーン車があるが、迷わずグリーン車を選択。371系電車と20000形電車が引退すると、小田急線内からグリーン車が消滅する。また、グリーン車は2階建て車両になっているが、これも小田急電鉄からは消滅する。最初で最後の小田急電鉄2階建てグリーン車への乗車だ。
 小田急電鉄の特急券は、車種が印字されるのが特徴。ちゃんと「あさぎり3号 (371系)」と印字されている。

 小田急新宿駅で折り返し特急「あさぎり3号」となる、371系電車の到着を待つ。21年も前にデビューした車両なのにじっくり見るのは今日が初めて。小田急線内の駅で通過するのを2回見ただけ。基本的に特急「あさぎり」専用で1編成しか無いレア車両だ。

ムービーライブラリ
JR東海 371系電車 到着(小田急新宿駅) (YouTube)

371系電車先頭  小田急新宿駅の行き止まりホームから、371系電車の真っ正面を見たところ。ヘッドマーク下の逆三角形部分が光っているのを初めて知った。


371系電車先頭  斜め前から見ると珍しい形の流線型だ。丸くてとがった感じ。


371系電車普通車  側面は大きな窓。JR東海の特急車両は大きな側面窓を持ち、列車名に「ワイドビュー」が付くが、371系電車は付かない。また、371系電車はJR東海で初めての特急車両として登場し、当時の主力新幹線車両100系電車と同じカラーリングを採用している。JR東海=東海道新幹線というイメージから在来線特急にも新幹線のイメージを持ち込んだのだろう。しかし、その後登場したJR東海の特急車両は、ステンレス車体にコーポレートカラーのオレンジラインが入るものが定着し、371系電車だけ異質な存在となっている。


371系電車グリーン車  乗車する2階建て車両。2階はグリーン席だが、1階は普通席となっている。371系電車は鉄道車両ではあまり採用例の無い外引きプラグドアを採用している。


発車案内表示器  発車案内表示器を見ると、発車間際でも空席ありのままだった。箱根方面のロマンスカーが好評なのに対して、「あさぎり」は利用率が低い感じだ。このため縮小(運転区間短縮)されることになったのだろう。
 371系電車が引退してもJR東海は代替えの新車を投入しない。もし、利用客が多ければ新車が入っていたかもしれない。


371系電車グリーン車車内  グリーン車は1+2列配置でゆったりとしている。1席だけ予約したが、2列側の窓際が指定された。1列側に空席があったのだが、1席予約の場合は1列側が優先されるわけじゃ無いのだろうか?
 グリーン車はまばらな乗車で、終点まで隣に誰も来なかった。


 新宿駅を発車すると、しばらくのんびりとした走りが続く。複々線化された区間は比較的速いがそれ以外は過密ダイヤでスピードが出せない感じ。

サウンドライブラリ
車内放送(新宿駅発車後)

 都市部を抜けると、過密ダイヤから解放されて走りも快調になってくる。そして、JR御殿場線への連絡線が近づいてくる。ゆっくりと右にきついカーブを通って松田駅へ進入する。

ムービーライブラリ
車窓風景(連絡線分岐手前〜松田) (YouTube)

 松田駅はJR東海の駅だが、ここまでは小田急線として扱われる。最寄りにある小田急新松田駅との乗り換えも可能。松田駅で下車する人がそこそこいる。JR直通特急としてでは無く、小田急線内特急として利用する人が意外といそう。
 御殿場線は単線の山岳路線だが、特急らしい走りだ。御殿場駅を過ぎると2012年3月17日のダイヤ改正以降は特急が走らない区間となる。小田急線内は全席指定だが、JR線内は自由席の設定がある。そのため、JR線内のみの利用客が少なくないようだ。

 終点に到着する前に車内を見て回った。

371系電車グリーン車車内  4号車から3号車側を見たところ。2階建て車両は3号車と4号車の2両連結されているが、2階建て車両同士は貫通路が2階にある。1階は行き止まり。首都圏のJR普通列車に2両連結されている2階建てグリーン車のように、平屋部−2階部−平屋部+平屋部−2階部−平屋部という構造では無い。平屋部−2階部+2階部−平屋部という2両1セットのような珍しい構造なのだ。


371系電車グリーン車デッキ  2階からデッキを見下ろしたところ。広くて開放感のあるデッキだ。


371系電車グリーン車デッキ  デッキから階段を見たところ。スペースが多く必要になる直線階段を採用。首都圏JR普通列車のグリーン車は省スペースな螺旋階段になっている。このゆとりはバブル全盛期に作られた車両ならでは?


 終点の沼津に到着すると、多くの乗客がホームに降り立った。JR線内のみの利用客もいるので、小田急からの直通客がどの程度いるのか分からないが、ダイヤ改正で区間が短縮されて御殿場〜沼津に特急が無くなると、不便になる人が多いかもしれない。

371系電車グリーン車  2階と1階の窓がつながった様に見える、特徴あるデザインの2階建て車両。


 切符に無効印を押してもらって記念に持ち帰るために、有人改札に並んだ。どうやら、PASMO(Suica)でやってきて出場できない人が多いようだ。自分の後ろにも自動改札機にカードをタッチしてエラーになった人が増えてくる。沼津駅はTOICAエリアなので自動改札機にICカードR/Wが取り付けられている。そのため、PASMOで出られると思うのだろう。
 自分の前にいた人は、小田急じゃない別の私鉄駅から入場し、乗り換え改札の無い経路を使って沼津まで来たらしい。駅員に経路を説明しているが、駅員は複雑な運賃計算に手間取っていた。そのため凄く待たされた。
 エリア内で使う分には凄く便利なICカード乗車券だが、知らずにエリア外に出てしまうと結構面倒なことになる。特に沼津駅近辺は、SuicaエリアとTOICAエリアの境や、PASMOエリアとTOICAエリアの境が接近しているためややこしい。さらに、SuicaとTOICAは相互利用可能で、SuicaとPASMOも相互利用可能、でも、TOICAとPASMOは相互利用できないという状況。有人改札の窓口にもそういった説明が書かれていたが、理解できない人が少なからずいる。

 元々、小田急3000形電車(SE)の片乗り入れで新宿〜御殿場を走っていた急行「あさぎり」は、1991年に371系電車と小田急20000形電車の投入による相互乗り入れと、運転区間を新宿〜沼津に延長して特急化された。華々しくデビューしたが、再び運転区間が短縮されて小田急60000形電車(MSE)による片乗り入れに戻る。利用客増加策を打ち出したり、座席指定のやりにくさを改善しないと、このまま自然消滅的に廃止されてしまうかもしれないと思う。

特急「はこね30号」
出口
JR東日本 快速「リゾートやまどり」(上り)

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